■皆さんカタ屋って知ってますか?
動物やマンガのキャラクターなどを型どった「粘土型」に、
金粉、銀粉、赤や緑といった極彩色の粉を
ぬりえのようにふりわけ、そこへ上から粘土をはめこんで、
美しい粘土の面をつくり出す。
ちょっと郷土玩具の職人になったような風情をかもし出す遊びであった。
(奥成達:詩人「駄菓子屋図鑑」飛鳥新社/H7年より引用)


これがカタ屋の持ってくる「カタ」だよ
●鉄人28号(縦22横15.5センチ) ●鉄腕アトム(縦17横10) ●ロボット三等兵(縦15横8)
●ポパイ(縦12横10) ●赤胴鈴之助(縦9.5横8) ●鉄腕ベビー(縦9横8)
笹川ひろし

●ぽっこちゃん(縦13横9) ●横綱大鵬(縦13横10)
■そこで実際にカタ抜きしてみると・・・
【カタ屋さんの想い出】


僕がカタ屋にであったのは、
昭和三十年代の子供たちを震撼させた
吉伸ちゃん誘拐事件で有名になった入谷南公園でだった。
(かっぱ橋商店街にある金竜公園にも来ていたかも知れない。)
やきそばやソースせんべいや梅ジャムを屋台で売るのと一緒に
公園の入り口のところに、
いくつものカタを立てかけていたような気がする。
紙芝居も一緒にやっていたのかも知れない。
それと「カタ抜き」といって薄い板に動物などのかたちある物を
キレイに切り抜くものも同時に売っていた。
これをキレイに切り抜くとおじさんから点数券がもらえて
それを集めるとすきなカタがもらえるような事になっていた。

平成になった頃
昔テキヤさんだった人から、型を譲り受けた。
その人は東京の下町の人だったから、カタ屋さんというのは、
あんがい下町ローカルなものかも知れない。



空想雑貨店主



【消えたカタ屋のオヤジ】


 ボクが生まれる1年まえに60年安保闘争が起き、学生運動が盛んになった。学
生と警察がやりあっていたあの頃、さすがに『天才バカボン』に出てくる、どこ
でも拳銃をぶっ放すお巡りさんはいなかったが、バカ田大学を卒業してるんじゃ
ないのか、みたいな変な大人はたくさんいた。それに、大人はいい人ばかりじゃ
なかった。子どもたちのサイフのわずかな中身を虎視眈々と狙っていた大人がた
くさんいたのだ。ウカウカしていたら小遣いは全部彼らに持っていかれてしまった。


●見事にしてやられた、カタ屋のオヤジ


 ボクは白昼堂々、あるオヤジに怪人二十面相のような鮮やかな手口で大切な小
遣いをゴソッとやられた経験がある。それがカタ屋のオヤジだった。
 そのオヤジはどこからともなくフラッと現れ、近所の神社の境内にムシロを敷
いて商売を始めた。まず、レンガのような素焼きのカタと粘土、そして新聞紙に
小さく包まれた色のついた粉の3点セットを子どもたちに買わせた。粘土をカタ
に詰めてはがすとレリーフ状の絵が出来る。そこに粉をふりかけて色を着ける。
そして、出来たものをオヤジに見せて評価してもらい、オヤジの評価に応じて点
数券をもらうのだ。その点数券を集めるともっと大きいカタがもらえるというシ
ステムだった。カタは月光仮面のお面、鉄人28号、アトム、動物、乗り物などが
あった。


 ボクは特大の般若面のカタが欲しかった。お金で買えないとなると、余計に欲
しくなった。それに図画工作にはちょっと自信があったので高得点はチョロイと
思い、とりあえず一番安い20円くらいのカタと色粉を2つほど買って挑戦した。
しかし、オヤジは一生懸命作ったボクの作品をろくすっぽ見ずに「これはダメ
ね」て言ってグニャッと握りつぶしてしまった。オヤジが高い点数をつけるのは
決まって大きいカタを使い、金や銀の高価な粉をたくさんかけたものだった。な
んのことはない、単にお金をたくさんかけたヤツの点数が高いのだ。次の日、ボ
クは負けじと貯金箱からお金を取り出し、勝負につぎこんだ。
 小さいカタからだんだん大きいカタへ。粘土の量も粉の量も増え、投資額もど
んどん膨らんでいく。2、3日してみんなが一番大きなカタの点数が溜まる頃に
なると、オヤジは忽然と町から姿を消した。してやられた! そう思ったときは
もう遅かった。ボクの半ズボンのポケットの中には点数券だけが残った。そこに
は「さらばだ明智君、また会おう」と書いてあるようだった……。


 カタ屋の他にも、安っぽい封筒の中にガリ版で刷った暗号のようなものを入れ
て子どもたちに売り(何個も買うと暗号が解ける)、答えを当てた子どもに商品
をくれると約束したその日に消えてしまうオヤジもいた。


 子どもが小動物に弱いことを知っていて、いたいけな小動物を道端で売る商売
もあった。代表的なのが「カラーひよこ売り」だ。赤、青、緑……罪のないひよ
こを、まるで駄菓子みたいに極彩色に染めて売っていた。ボクのひよこはすぐに
死んでしまったけど、友達のは立派なニワトリに成長した。友達は「朝、大きな
声で鳴くので近所迷惑で仕方ない」と言っていたけど、その後、そのニワトリが
どうなったかは覚えていない。動物関係では「カラーモルモット」や、大きくな
らない「ミニうさぎ」(もちろん、大きくなる)なんてのもあった。


 縁日のテキ屋にも手強いオヤジがいた。簡単なルーレットくじなんだけど、針
を結んだ棒を指で押して回して、その針が指したところの景品をくれるというこ
とになっていた。しかし、これが絶対に大当たりのところには行かないのだ。
 しばらく見ていると、机の下で磁石を操作しているな、ということくらい誰で
も分かってくる。で、後ろに回って見ようとすると、そのオヤジはものすごい剣
幕で怒った。
「オヤジ、磁石でインチキしているんじゃないのか」と言いたくて仕方なかった
けどグッと堪えた。殴られかねないほどコワイオヤジだったから。この商売は絶
対にニヤけたあんちゃんじゃダメだ。えも言わせぬ迫力があってこそ、出来る商
売なのだ。体からオーラのように発するスゴミ…そんなのは平凡な人生を送った
ヤツには出せっこない。だからオヤジはインチキをやる資格があるのだ。平凡な
サラリーマンの家に生まれ、なんとなくのほほんと生きていたボクは、そんなオ
ヤジたちの迫力に漠然とした魅力を感じていた。たぶん、憧れの眼差しで見てい
たと思う。


 何度騙されても不思議と怒る気にはならなかったな。だって、オヤジたちはそ
れなりに真剣に仕事してたもん。ボクはオヤジたちに騙されながら、大人になっ
た。


【ちびっこVSテキ屋オヤジの、バトルロワイヤルな日々……】より
大越孝信(ライター、編書「ちびっこ広告図案帳」<オークラ出版>)




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